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コラム

第20回摂食障害

若い女性に広がる「やせ願望」-摂食障害について

 

今回は摂食障害についてです。主として若い女性にみられる食行動の問題で、拒食症(神経性無食欲症)と過食症(神経性大食症)の二つに分けられます。1960年代テレビが普及し、美意識が広まるとともに拒食症が増え、コンビニが増えてきた1975年代から過食症も合わせて増えてきました。摂食障害はダイエットと密接な関係があります。しかし重症例では、背景としてそれ以外の精神的な要因も考える必要があります。

 

拒食症は摂食拒否による意図的な体重減少(極度のやせ)が主症状です。十歳代から始まることが多く、発症の要因はダイエット、ストレス、家族葛藤、心的外傷、挫折体験、性格傾向など複雑です。やせ願望が強く肥満に対する恐怖を持っており、いくらやせていても満足できず、まだ太っていると思い続けるボディイメージの歪みを認めます。頑固に拒食し、やせるために動き続け、著しいやせが続くと生理は止まり、骨粗鬆症、多臓器障害、脳の萎縮など深刻な問題が発生します。飢餓状態から身体を守るために脳内麻薬が分泌され、気分が高揚し空腹感が消失します。そしてやせの悪循環に陥り、死の危険にも無頓着となります。

 

過食症は、むちゃ食いを発作的に繰り返し、食行動を自己制御できない状態です。しかし自分の体重には過度に関心を持っており、体重を増やさないために自己誘発嘔吐や下剤、利尿剤の乱用を続け、身体の負担は大きくなります。拒食症と同様、やせ願望や肥満に対する恐怖があり、過度のダイエットのため習慣となったり、欲求不満の代償であったり原因は様々です。拒食症に続き過食症となるケースも多く認めます。

 

男女比は1対10と、圧倒的に女性に多い病気です。これは女性の方がやせ願望や、ダイエット指向が強く、体型に対する社会的プレッシャーが大きく、やせていることに価値をおいているためと考えられています。男性の場合は、精神的問題を食行動ではなく、むしろ非行や家庭内暴力などの形で表現しやすいと言われています。

 

治療としては、集団療法、認知行動療法、家族療法、自助グループを含めたネットワークの利用などが有効です。もちろん重度の場合は入院加療も必要となります。また摂食障害に見られる強迫的傾向を治療するためにSSRI (選択的セロトニン再取込み阻害剤)、三環系抗うつ薬などの薬剤も一定の効果があります。

 

現在、若い女性を中心にやせ願望が広がり、低年齢化してきています。やせていることが美しいという意識が強く、やせることの健康への悪影響に無関心であることがとても心配です。次回から当院の坂井敏夫先生にバトンタッチです。

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