第4回精神療法と社会療法について
薬を使わない治療は、精神療法と社会療法(生活療法)に分けられますが、他の科ではみられない精神神経科独特のバリエーションがあります。医師や看護師などの医療スタッフが行うものから、他の専門職の力を借りるもの、家族や社会資源を利用するものまで多彩です。そのいくつかを簡単に説明します。
6、精神療法について
精神療法には個人精神療法と、集団を組織して行う集団精神療法があります。
個人精神療法とは、その個人の心の問題を整理し、解決していくために言葉を使いながら手助けをしていく方法です。治療者は医師やカウンセラーということになり、これには治療を受ける人と治療者の感情の疎通性(ラポール)が重要な役割を果たします。その他に認知行動療法(その人のストレスの捉え方や考え方の癖を、行動を通して修正する)などがあります。
集団精神療法は、集団の中で各自がお互いに共感することを言葉や動作、演技等で表現し、それぞれの個性を尊重し協調しながら人間関係を修正したり、新しい関係のあり方を学ぶものです。この集団には医師ばかりではなく看護師や臨床心理士なども複数参加します。SST(社会技能訓練)、アルコール集団療法、家族療法、回想療法等がそうです。
7、社会療法(生活療法)について
精神神経科での治療の期間は他の科よりも長くかかることが多く、特に入院治療に費やした時間により社会性を失うことも少なくありませんでした。そこで、社会療法(生活療法)が工夫され発展しました。その人が社会人としての諸々の権利を回復するための働きかけをする治療で、いわゆる精神科リハビリテーションです。生活指導やレクリエーション療法、作業療法(作業や活動をしながら自信や意欲を取り戻し、社会に適応しやすい行動を身につけていく。芸術療法も含まれる)等の治療があり、その人が社会生活する上での問題を整理し、日常生活上必要な行動の向上をはかり、社会性を取り戻してもらうのが目的です。入院中に限らず、外来デイケア等でも行われ、また十勝では病院やクリニックの他に、音更リハセン、ケアセンター、生活支援センター等でも行われています。
精神科医療からみた社会療法は、とても広いものを対象にしています。しかし医療は社会生活からみるとほんの一部に過ぎません。また生活療法は医療にあるから治療であり、普段は生活支援です。社会生活の視点から精神科ソーシャルワーカーや作業療法士が主体的に、医療スタッフやボランティアと連携し、そして今後は回復した生活者とチームを組み、生活支援をして行くことが望ましいと考えています。
次回は統合失調症についてお話しします。