第6回統合失調症の概念と診断
最近の精神医学の進歩で新しい見識が集められ、統合失調症の姿はかなり明らかになってきました。まず統合失調症の概念をお伝えしましょう。
統合失調症に特有の症状は以下の4項目です
- 思考化声(考えていることがそのまま声になって聴こえる)、思考吹入(考えが外から吹き込まれる)、思考奪取(考えが抜き取られ空っぽになる)、思考伝播(考えただけで周囲に伝わってしまう)
- 操られる、影響される、抵抗できないという妄想。妄想知覚(知覚した日常の現象から、直ちに妄想的な意味を感じる:例白衣についた小さな血痕を見て、「自分は死ぬ運命だ」と確信するなど)
- 自分の行動に絶えずコメントしたり(例:食べようとすると「食べるな」と聴こえてくる)、仲間たちが自分を話題にしたりする幻聴。身体のある部分から発せられる幻聴(例:お腹から聴こえてくる)
- 文化的に不適切で全くありえない内容の持続的な妄想(例:自分は万能の神であり世界平和のため永遠の命を持っているなど)
以上のうち1つが1ヶ月以上続いていること、ただし他の脳の疾患や薬物に関連した精神障がいではないことを確認し診断します。これはICD-10という国際診断基準です。「興奮している」とか「引きこもっている」という症状は副症状としてあげられています。
- 世界各国で行われた調査によると、地域や文化による差はなく100人に一人程度の割合で発病した体験を持っている人がいます。これは統合失調症が特殊な病気ではないことを示しています。
- 遺伝や子育てが発症の直接の原因ではありません。ある調査によりますと、統合失調症の約89%は両親が統合失調症ではなく、甥や姪に拡げても63%はそうでありませんでした。また一卵性双生児の場合、一人が統合失調症を発症すると、もう一人の発症は48%でした。子育てが性格形成に影響を与えることは確かですが、発症につながる証拠はありません。
- 10代~20代に発症することが多いのは、思春期の身体や精神の発達、受験や就職、結婚、出産や子育てなどの人生上遭遇する様々なストレスの多い時期によります。
- 人はそれぞれ生物としての「ストレスに対する脆さ」を少なからず持っていて、脆さの程度は個人差があります。
- その「脆さ」は遺伝や育児環境だけによるのではなく、多くの要因が絡み合って生じるものと考えられています。その「脆さ」が様々なストレスにより、その限界を超えると発症するといわれています。
次回は症状についてお話しします。