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コラム

第9回急性期治療のポイント

何故このような症状が起こるのか、完全には分かっていませんが、理解しやすい仮説をお話ししましょう。私達は周囲の雑踏の中から、相手の声を聞き分ける事が出来ます(カクテルパーティー現象といいます)が、その際の現象を例にとって説明します。

相手の話を聞こうという集中力が適度であれば良いのですが、集中し過ぎると、他の様々な音にも注意が向いてしまい(注意集中力が高まり過ぎている状態を過覚醒といいます)、何を聞いて良いのか優先順位が分からなくなり、かえって聞き分けは困難になります。

これは脳内のドーパミンという物質を介して働く神経が、過覚醒になっているからです。

 

また雑踏の他の音にフィルターをかけて意識しない様にし、相手の声を聞き分けられる様になっていますが、このフィルターが失調していると他のいろんな音が入って来てしまい集中できなくなります。

このように急性期の統合失調症の症状は、ドーパミン仮説やフィルター理論で説明されます。そこで急性期の治療のポイントをお話しします。

 

  • 第一に薬物療法です。ドーパミンを介して働く神経の過覚醒やフィルターの失調を治すため抗精神病薬を用います。薬を飲むと働き過ぎの頭にブレーキがかかり、頭の回転が鈍く感じたり、眠くなったり、やや不快な感覚になることもあるため、予めどのようになるのか説明をうけることが大切です。
  • しっかり休息を取ることです。急性期は治療をせずに放っておいたのではまず眠れないもので、薬の助けを借りて睡眠を確保する方がよいでしょう。その際はやや多めの睡眠を取れるのがよく、眠り過ぎが身体に害を与える心配はまずありません。またいつでも横になってもよいと伝え、無理をしないでよいことを保証してあげます。
  • 音や光、人込みや刺激を避けることです。本人にとって、ほんの小さな音でも大きく響いて聴こえています。色々と悩みを聴いてやろうと話しかけられることさえ、嫌になります。一度の会話量もすくない方が良く、簡潔な言葉で伝え、長くなるなら一旦切り上げ次の機会にします。
  • さりげなく傍に静かにいること、それだけで安心するものです。
  • それでも混乱が激しく、どうしても自宅で休めない、また家族が疲れ果てた時には入院を考えましょう。本人の行動や感情の変化が激しく、暴力のために互いに傷つけたり傷つけられたりする危険が高まっている場合、本人の病状も悪化していると考えられ、積極的に入院を考えます。家族の疲れも極端な場合も同様です。入院の最大の目的は医学的な管理をすると云うのではなく、本人の睡眠や安静を確保することです。まず、どのように治療に導いていくか専門医と相談することをお勧めします。

 

次回ももう少し急性期の治療経過についてお話しします。

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