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コラム

第14回こんな症状があればうつ病に注意

うつ病の最古の記述は紀元前10世紀にさかのぼります。紀元前5世紀にヒポクラテスはうつ病の原因を黒胆汁(メランコリア)にあると考え、それはうつ病の名称として現在でも用いられています。特筆すべきはその時代において、既にうつ病の原因は身体にあると考えられていたということでしょう。

 

うつ病の症状は“抑うつ気分”“精神運動抑制”“不安焦燥感”“身体症状”にまとめられます。“抑うつ気分”とは憂うつで悲しく、落ち込んだ気分をいいます。自信を失い、過去の過失ばかりが目に付き、自責的になります。何事にも興味がわかず、以前には楽しみであったことでも煩わしく感じるようになります。時には経済的に破綻していると信じ込んだり、回復不能な病気にかかっていると思い込み、頑固に身体症状を訴えることがあります。また、物事が上手く運ばない原因を全て自分の責任と考え、悩むこともあります。“精神運動抑制”とは思考活動が緩慢になることをいいます。何事も思い浮かばず、決断ができなくなり、集中力や判断力が低下するため、失敗が多くなり、そのことがさらに本人を苦しめます。知的活動も衰えるため、認知症(痴呆)と間違えられることすらあります。“不安焦燥感“のため落ち着きが無くなり、いらつくことも多くなります。この焦燥感は時には激しいもので、自殺念慮に結びつくこともあります。“身体症状”として、全身倦怠感、頭重感、肩こり、胸部圧迫感、手足のしびれや冷感、発汗、口渇や便秘など、多彩な自律神経の失調症状を認めます。食欲は低下し、食事が美味しいという感覚が無くなり、また性欲も低下します。不眠はほとんどの症例に認められ、寝付きが悪いだけでなく、早くから目が覚め、そのまま眠れずに朝を迎えるようになります。

 

症状の軽重はありますが、以上のような症状が2週間以上続きます。このようにうつ病は大変辛いものです。たいていの場合はこれらの症状を自覚しても、身体的検査では異状が見つからないため、病気によるものとは考えず、文字どおり鬱々(うつうつ)とした日々を過ごしてしまいます。時には症状が長期に持続し、周囲の人だけでなく自分自身も「元気のないのは性格だから仕方がない」とあきらめて生活している場合が少なくありません。(こういった状態が2年以上続いた場合、“気分変調症”といいますが、本質的にうつ病と同じものです。)

 

このようにうつ病は個人的にも社会的にも重大な問題です。しかしうつ病は治る病気であり、確立された治療法があります。

 

次回はうつ病の原因と治療についてお話します。

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