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コラム

第15回抗うつ薬の効果と注意点

前回ヒポクラテスがうつ病の原因を身体にあると考えていたことは特筆すべきことだと述べました。さすがに原因が黒胆汁(メランコリア)ということではありませんが、うつ病は身体の臓器のひとつである脳の問題です。心の動きはとても複雑であり、脳内での化学物質の伝達や電気的興奮にて語れるものではなく、また語るべきものではありません。しかしうつ病は一つの疾患であり、現在ではその原因は脳内での神経伝達の機能異状によるものということがわかっています。

 

機能異状の要因となるものがストレスと体質です。強いストレスの持続は神経を疲弊させ機能低下を引き起こします。それが短期間では回復しないレベルまで至ったものがうつ病といえます。ストレスへの耐性や、耐えられるストレスの種類、疲労からの回復のスピードには個人差があり、同じ状況でもうつ病にかかる人と健康を保つ人がいる事は、この個人差(体質)によります。

 

それではうつ病を治すためは何が必要でしょう。上記によれば回復に必要なものは疲弊した神経の休息と、神経伝達の機能異状の是正という結論に達します。そのためには心身の休養と、薬物療法が必要となります。うつ病を病気と捉える事が困難であると同様に、心の病気には薬を飲んでも意味がないと考える人は多いものですが、うつ病による神経伝達の異状の是正に薬物は非常に効果が高いのです。抗うつ薬は神経伝達物質の働きを整える作用により、うつ症状を改善させ、大半のうつ病に効果を示します。以前は眠気や口渇、便秘等の副作用が問題となりましたが、ここ数年で副作用の少ない抗うつ薬がいくつも開発され、多くの方の治療に用いられています。

 

薬物療法には注意点がいくつかあります。抗うつ薬は飲むとすぐに効果が現れるものではなく、効果発現までに2週間程度を必要とします。また薬によって症状が改善しても、元々の機能異状は続いている事が多いため、半年程度は内服を継続する必要があります。またうつ病は治りやすい病気ですが、再発しやすい病気でもあります。統計によると約半数に再発を認め、再発は繰り返す傾向にあります。再発を防ぐためには薬物の継続的な服用が有効です。よく「精神科の薬は一度飲むとやめられない」といわれますが、うつ病に限らず精神科領域では健康を維持するために、予防的な内服の継続が必要な場合が多いため、このような誤解が生じていると思われます。また抗うつ薬に限りませんが他の薬剤との併用に注意を要するものもあり、他の医療機関にかかる時には必ず薬剤を服用していることを伝えましょう。

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