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コラム

第16回パニック障害

Aさんは、夜くつろいでいた時に突然、心臓がドキドキと脈打ち、思うように呼吸ができなくなりました。汗が流れ、めまいやしびれも現れ、死んでしまいそうな恐怖感に襲われました。やっとの思いで救急車を呼び、病院でいろいろと検査を終えた後、医師に呼ばれました。その頃には症状は治まっていましたが、「心臓の病気だろうか、重い病気だったらどうしよう」とAさんは不安でした。そして医師の診断が下されました。「特に異常は見つかりませんでした。帰っても良いですよ。・・・」 しかし、Aさんはその日から、軽い動悸を伴う不安の発作が毎日のように見られるようになりました。発作が心配で一人で外出も出来ず、眠れない日が続いています。この頃はだんだんと気分が憂うつになってきています。

 

さてAさんに何が起きたのでしょう。このような身体的な原因がないにも拘らず動悸やめまいなど様々な自律神経の失調症状を伴う不安発作を、パニック発作と呼びます。そして繰り返されるパニック発作や発作が起きるかもしれないという不安の為に生活に支障を来している状態は、パニック障害と診断されます。この疾患は人口の2~3%に認められます。パニック発作は辛いものですが、通常は30分程度で消失し、それがどんなに激しくても、決して死んでしまったり、後遺症が残ったりする事はありません。しかしこの疾患のさらに厄介な所は、発作への不安が強く、外出ができなくなるなどで、生活から楽しみが失われることです。そのためこの疾患はしばしばうつ病を合併します。

 

この病気の治療は発作を抑えて、安心して生活できるようになる事が第一であり、そのため薬物療法が行われます。以前はほとんどの症例に抗不安薬が使われていました。しかし、抗不安薬は眠気を生じ易く、依存性も比較的高いなどの問題があり、そのため最近では抗うつ薬の一種であるSSRIも用いられています。SSRIはパニック発作をおさえると同時に不安の解消も図り、気分も改善させるため、抗不安薬にとって代わろうとしています。しかしSSRIは効果の発現に時間がかかるという欠点があり、また吐き気などの消化器系の副作用がでることがあります。そのため通常は抗不安薬とSSRIを症例に合わせて使い分けたり、組み合わせたりして、治療を行っています。薬を飲むことに抵抗のある方は多いのですが、薬物療法の効果は非常に高く、薬を継続して服用する事により発作はほとんどおさえる事が可能です。パニック発作が消失しても、外出などを尻込みしてしまう事もありますが、そんな時には精神療法や行動療法を併用して治療を行います。

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