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コラム

第31回睡眠障害(上)

これから睡眠障害についてお話しします。この現代社会は24時間型社会(夜勤の増加等)といって、普通寝ている時間帯に仕事をしている人々が多くいます。よって文明が発展するほど仕事の多様性は増し、人の睡眠時間は短縮している様です。しかし、睡眠は「手の中の小鳥」に例えられるように、捕まえようとすればする程捕まえられないもので、自分の意思がきかないのです。眠ろうとするほど眠れないため、不足した睡眠時間を取り戻そうとしても上手くいかないのです。このような社会の状況がストレス社会や高齢化社会と関連し人の睡眠に影響を与えています。

 

睡眠障害は大きく分けて不眠症と過眠症があります。睡眠時間は個人差があり一般的には6時間半~7時間半と云われていましたが、日常生活に支障をきたさなければ睡眠時間の長短が問題になることはありません。問題なのは、睡眠時間の減少や睡眠の質(熟睡感、早朝に目覚める、夢見が多い等)の低下による日中の眠気です。これは人の注意力、判断力や作業能力を低下させ、事故の発生率を増加させるので問題視されています。

 

不眠症とは入眠困難(床に入って寝付くまで60分以上かかる)、中途覚醒(2回以上目覚める)、早朝覚醒(普段より2時間以上早く目覚める)、熟眠感の欠如、以上のうち1項目以上が週3日以上あり,1ケ月以上続いている場合と定義します(村崎光邦:1999)。

 

不眠を呈する環境要因としては騒音、気温やシフトワーク(夜勤と日勤の混在、時差勤務等)、寝床の違いや枕の高さ等があげられます。また睡眠障害を呈する疾患は多種多様で、片頭痛(群発頭痛の夜間発作)、高血圧、糖尿病、肝硬変、周産期や更年期障害などの婦人科疾患、かゆみ等の皮膚科疾患、胃十二指腸潰瘍等の消化器疾患、喘息等の呼吸器疾患、腰痛や神経痛、甲状腺機能障害、貧血等が挙げられます。そしてうつ病などの精神科疾患には必ずといっていいほど睡眠障害は認められます。

 

過眠を呈する疾患として、睡眠時無呼吸症候群(10秒以上続く呼吸停止が1時間に5回以上出現するもの)、睡眠時ミオクローヌス(周期的に脛の筋肉がピクつく)、ナルコレプシー(発作的に強い眠気、脱力が出現し、かなしばりや入眠時幻覚を伴う事もある)、睡眠相後退症候群(入眠と覚醒のタイミングが遅くなり後にズレる。いわゆる遅寝遅起きとなって昼夜逆転してしまう。登校拒否や出社困難の原因となることがある)などがあげられます。

 

睡眠に関するその他の問題として、いびき(ひどいいびきの中に、睡眠時無呼吸症候群が隠れている事がある)、寝言や夜驚症、夢中遊行、夜尿などもあります。これらは本人が寝ているため気付かない事がほとんどで、周りに指摘されます(先の睡眠時ミオクローヌスもそうです)。

 

それぞれは、終夜睡眠ポリソムノグラフィー(睡眠時に脳波、眼球運動、呼吸、筋肉の動きなどを測定)や酸素飽和度の測定、日中の入眠時間の測定等によって診断します。次回にはその治療についてお話しします。

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