第33回精神科リハビリテーション(上)
精神科リハビリテーションは、ドクターリレー④「精神療法、社会療法について」で述べられている精神神経科の治療の中の、薬を用いない治療に分類され、長期に渡る入院生活による社会性の欠如や病気による社会適応技能の低下というものに対して働きかけていくことを目的としています。精神科に限ったことではありませんが、入院生活をするということは、通常私たちが生活している場面から切り離され、極端に情報の少ない状況に身を置く事になります。
入院が長期になればなるほど情報量も経験も少なくなるということになります。それに加えて、統合失調症などの精神疾患を患っている方々は、生活をしていく上で必要とされる判断や順応、協調や適応といった技能が病気によって失われていたり、様々な理由から対人技能に障がいを持っていたりします。その為に一般的にはとても普通になされている行動が、とても難しいことと受け取られていて、新しいことや経験したことのない事に挑戦できずにいたりするのです。
例えば、病院の売店以外の場所での買い物をすることが難しくなる。料理をしようとして材料を前にしても、何から手をつけたらよいのか、手順がわからなくなる。公共の乗り物(路線バスや電車など)を利用することが困難になる。ほしい物がどこに行けば手に入るのか、価格はどれくらいなのかがわからない。これらができることは『生活をする』ことに直接必要な技能です。それが病気や長期入院によって、結果として退院することが困難になったり、とても生活しづらい状況になってしまうのです。
そこで、リハビリテーションを通して、失われた生活の技能をもう一度習得したり、失われた機能に取って代わる新しい技術を身に付けていただくことになります。「生活のしづらさ」は一人一人ちがいますから、それぞれに合った方法を用いて、一人一人が自分らしい生活を送る事を目標に、「その人の持つ良いところ」を使って少しずつできることを増やしていくのです。
イメージとして、ここに獲得したい技能があるとします。すると、リハビリテーションではその技能を獲得するために必要な技能を細かく分けて、一つずつ成し遂げていくことを積み重ねて目標とする技能を獲得する方法をとります。その人の良いところを強化・活用して小さいステップを成し遂げるという体験の積み重ねによって、自信や希望を持ち、最終的には自分自身の力で目標をクリアすること、自分でできることを目的にしているのです。リハビリテーションの方法はいろいろな方法があります。
次回からは、その方法についてお話したいと思います。